日本有数の豪雪地帯へ

「秋田弁では、『け』という言葉に、3つの意味があるんですよ」

初めて訪れた、冬の秋田。空港から乗ったバスの中で、ガイドさんの話に耳を傾けていました。

ひとつは、「食え」という意味。「うめがらけ~」は、「おいしいから食べな~」。

ふたつめは、「来い」。「こっちさけ~」は、「こっちに来なさいよ~」。

みっつめは、「かゆい」。「せながけ~」は、「背中かゆいよ~」。

という意味になるそうです。

「そして『く』は、『食う』という意味になるので、秋田の人は、『け』、『く』で会話が成り立つんですよ~」

頑張って標準語で話しているのだけど、どうしても言葉の端々に秋田の訛りが出てしまう地元ガイドさんに、乗客たちは和みました。

さすがは日本有数の豪雪地帯です。東京で暮らしているだけではお目にかかれない、珍しい除雪機械がたくさんありました。歩道では小さなスプリンクラーが絶えず雪を溶かしていて、大曲駅ではパトカーに積もった雪を警察官の方々が落としていました。雪とともに、人々は暮らしていました。

「かまくら祭り」に心温まる

旅の大きな目的は、横手市で行われる年に一度の「かまくら祭り」。市内中心地には100以上の「かまくら」が並び、幻想的な光景でした。

それぞれのかまくらには、かわいらしい子どもたちが入っていて、「入ってたんせ~(入ってください)」「あがってたんせ〜(お餅や甘酒を召し上がってください)」という明るく元気な声が、横手の夜を照らしていました。

雪でできていますが、かまくらの中は意外なまでに暖かく、ここで甘酒を飲むのが一興。「かまくら交番」というのもありました。おそらく、世界にひとつだけでしょう。

観光客で賑わう「かまくら祭り」でも、少し奥まったところに来ると、地元の方々が多く、純朴な風情がありました。

甘酒やお餅をいただいたら、気持ちとして100円くらい渡すのが通例なのですが、子どもたちは少しも「しめしめ」という顔はせず、「ありがとうございます~」という気持ちのこもった返事をしてくれ、そのことに温かさを感じました。

外からは見えない、増田の「内蔵」

「かまくら祭り」の翌日、同じ横手市でも、南の方にある増田町に向かいました。実は2年前にこの町が、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されました。かといって、メインストリートを歩いてみても、とくに目立った家並みは見られません。

実は外観だけでは、増田町の凄さはわからないのです。家の中に入り、奥へ進むと、「内蔵(うちぐら)」と呼ばれる重厚な蔵が姿を表します。

江戸時代から交通・交易の要衝として栄えた増田町は、明治になっても県内でも指折りの商業地でした。

商家の主人たちは、家の外観を立派にすることはしませんでしたが、代わりに、内部に立派な内蔵を作りました。これは、蔵を雪から守るためでもありました。

家の中にあるため、本来は所有者しか見ることのできないものですが、現在では観光客も増えており、見学が可能になっています。

3軒訪ねましたが、各家のご主人は、我が子の自慢をするように、内蔵についてたっぷりと説明してくれました。最高級の材料を使っているだけでなく、白漆喰や黒漆喰磨き仕上げなどの意匠が凝らされていて、実に見事でした。

海外であれば、外観の装飾を権力や資金力の象徴とすることが多いですが、ここでは家の内側に。外から見ても、立派な家だとはさほど感じないのですが、中に入ると「うわあ」となる。

内蔵を持つ家がこれほどの規模で何軒も並んでいるのは、日本でも増田町だけのようです。日本に暮らしていても、まだまだ知らないことがたくさんあるのだなと、この国の奥深さを改めて思い知らされました。