以前、NHKの『おはよう日本』という番組で、興味深い取り組みが紹介されていました。

「ask me!」と書かれたボードを掲げた若者の団体が、渋谷など外国人観光客の多い場所に立ち、困っている観光客を見つけたら話しかけ、助けてあげる。そのような活動でした。

実際に道案内をしてもらい、笑顔でインタビューに答えている訪日外国人の姿を見ていて、「心温まる活動だなあ」と感銘を受けました。

すぐにNPO法人「ask me!」を立ち上げた萩野谷未歩さんに連絡を取り、お話を聞かせていただくことに。いったい、どのような経緯でこの活動が始まったのでしょうか。

21歳で世界一周の旅に

原点は、学生時代の旅にあるようでした。

「19歳のときに、『コンチキツアー』というバスツアーに参加し、ヨーロッパ12カ国を周遊しました。これは18歳から35歳までが参加できる国際的なバスツアーなのですが、全世界から50人が集まるなか、日本人参加者は私だけでした」

初めの頃は、みんなの話の盛り上がりについていけず、孤独感や不甲斐なさを感じ、泣いてしまうほど辛かったそう。

「でも、積極的に話しかけるようになったらどんどん仲良くなり、最終的には楽しくて忘れられない1ヶ月間になりました」

もっとたくさんの世界を見てみたい。そう思った彼女は、21歳になると、さらに思い切った旅に出ます。今度は200日以上かけて、世界一周することに。

「世界一周の旅をするなかで気付いたのは、出逢った人の印象が、その国の印象になってしまうということ。どんなに素晴らしい景色や世界遺産を見たとしても、結局、人の印象には敵わなかったんです。

だからこそ、私たちひとりひとりが外国人観光客に親切にしてあげられたら、きっと日本を好きになってくれると思うし、お互いに助け合う文化、困っている人に気軽に声をかけてあげる文化を育むことで、日本はより良い国になると思いました」

しかし活動の理由は、それだけではありません。

「海外をもっと身近に感じてほしい」

「海外に出てみて初めて、『日本がどれだけ恵まれている国か』ということに気付けました。若者は海外に出て、様々なことを体験するべきだと思います。ツアーではなく、できればひとりで。でも、言葉の問題や様々な不安があって、一歩を踏み出せない人もたくさんいます。

『ask me!』の活動に参加してもらうことで、その障壁を少しでも取り除けたらいいなって。日本にはたくさんの外国人がいます。彼らと話すことで、自信をつけてほしいし、色んな国の人と友達になって、海外をもっと身近に感じてもらいたいです」

数名の仲間とともに始まった「ask me!」でしたが、徐々に共感の輪で広がっていき、今では多くの参加者が集まる活動になりました。

すでに都内だけでも100回以上開催していて、現場の運営はメンバーに任せていますが、活動後の全体ミーティングには可能な限り萩野谷さんが顔を出すようにしているそうです。

「学生のメンバーも増えていて、みんな様々な目的で活動に参加してくれます。『外国人の友達が欲しい』『英語の練習がしたい』など、個別の目的を持ってくれることはもちろん嬉しいことなのですが、それだけだと活動への想いにズレが生じてきてしまいます。初めて参加するメンバーも毎回いるので、必ず私の口から、理念を伝えるようにしています」

現在は東京だけでなく、神奈川、大阪、福岡に支部もできていて、信頼するメンバーに運営を任せているとのこと。これからさらに大きな活動になっていくでしょう。

「小さな恩送り」がつながっていけば

「活動を通して、これまでに数え切れないほどの出会いがありました。道案内をして、連絡先を交換したのがきっかけで、数ヶ月後にまた東京に来てくれて一緒にご飯を食べた台湾人。3時間近くも案内をしたイタリア人グループ。また、あるスペイン人の方とはランゲージエクスチェンジをするようになって、今でもときどきスペイン語を教わっています。

話したのがたった5分だけだったとしても、それが一生の出会いになることがあります。なんだか素敵ですよね。

誰かから受けた恩を、隣の人に送る。大きなことをしなくても、ひとりひとりの小さな恩送りがつながっていけば、とても幸せな世の中になるんじゃないかなって。『ask me!』を通して、そういう世界を実現していきたいです」

ask me! のサイトはこちら
http://askmejapan.wixsite.com/ask-me